小野有五・意見陳述内容

26:泊原発周辺の地震性隆起

 泊原発周辺にも地震性隆起を示す地形があります。トンネルの手前には、「海食洞」があります。これも、もとは海面で波が当たって、やわらかい部分が削られてできた洞窟です。中で縄文期の遺跡が見つかっていますので、縄文人がこの洞窟を利用したことを考えると、約7000年前にできていた洞窟が、あとでここまで隆起したと考えられます。また手前では、崖の一部がへこんでいますが、これは「ノッチ」と呼ばれる地形で、もとはいちば波が当たる海面のところにできていた地形です。それが、いまはここまで隆起しているわけです。
小野有五図26

27:神威岬の離水ベンチ

 観光地になっている積丹半島のカムイ岬にも離水ベンチがあり、やはり、波で平に削られた浅い海底だったものが、地震によって持ち上がったベンチだと思われます。
小野有五図27

28:長期間にわたって地震性隆起が継続してきたことを示す地形

 泊原発周辺の積丹半島には、このような「離水ベンチ」だけでなく、それより高いところに、何段もの「海成段丘」が見られます。いちばん高いのがH1面、泊村がのっている平らな面は、約12万5千年前には浅い海底で、波で削られ、砂などが堆積してできた平らな面が、その後の地震性隆起で、約30mも隆起してできた地形なのです。これは日本各地に分布しており、M1面、またはS面とよばれています。その下にはM2面と呼ばれる海成段丘面があり、長期間にわたって、地震性隆起をもたらす活断層の運動が続いてきたことがわかるのです。
小野有五図28

29:泊原発にもっとも近い活断層

 地震性隆起を示すこのような海岸の地形や、海底地形、さらに音波探査データなどから、さきほど「科学」での共著論文を引用した3人は、2009年の日本地震学会で、泊原発のわずか15km沖合に、長さ60-70kmの活断層があることを発表しました。この図は、著者のひとり、渡辺満久さんが、2011年に札幌で講演されたときに映されたパワーポイント画像を簡略化して示しております。ベンチやノッチ、海食洞、海成段丘面など、かつて海面にあった地形が隆起するためには、海岸の比較的近くに、これらを隆起させるような断層がなければなりません。そして、それは、陸地側が海側に向ってのし上がるような逆断層になるはずです。この図で、活断層はたしかに泊原発に近いが、それでも15kmは離れているではないか、と思われる方もおられるでしょう。でも、そうではないのです。
小野有五図29

30:泊原発に近い逆断層は直下型地震をもたらす可能性がある

 なぜかといえば、この活断層は逆断層であるために、断層面は、泊原発の下に向って傾いて続いていくからです。地震というのは、この断層面のどこかで破壊が起き、その破壊が広がっていくことで生じます。ということは、泊原発の真下で、直下型地震が起きる可能性もあるということです。さきほどの図で示しましたように、長さ60-70kmの活断層は、少なくともマグニチュード7,5くらいかそれ以上の大きな地震を起こしますので、この地震が起きれば、泊原発には致命的な被害が出るでしょう。
小野有五図30

31:活断層は連動することが3.11で明らかになった

 3.11では、活断層が500kmにわたって連動して動き、大きな地震と津波をもたらしました。これまで、活断層による地震や津波の評価は、1つ1つの活断層ごとに行われていましたが、3.11以後、近くにある活断層は、つながっていないように見えても、大地震のときには連動して動き、地震の規模をさらに大きくすることがわかったのです。そこで、原子力保安院は、岩内堆の東方に伸びる活断層が、陸上にある黒松内低地帯の活断層と連動して、長さ150kmの断層が一度に動いたらどうなるかを検討しなさいと北電に命じました。北電はそれに答えるといいながら、全ての活断層が連動したときの計算を避け、個別に計算した結果しか出しませんでした。そのような不誠実な態度をとる一方、北電は、この活断層がさらに噴火湾の海底を経て、八雲まで伸びる可能性を認め、164kmの活断層が連動したときの地震動を検討するとも言っています。現在、その回答を待っているところです。(その後、北電は、計算結果を発表し、原発に影響する短周期の地震動では問題がなく、長周期の地震動では、これまでに想定してきた地震動を超える地震動が出たとしましたが、詳細については公表していていません)。すでに、この地域には、長さ100km級の大活断層がいくつも存在する可能性を指摘しました。詳しくは、別途、準備書面で述べる予定ですが、活断層のきわめて密な分布を見れば、連動の危険性が、この場合だけではないことがおわかりでしょう。
小野有五図31

32:結論

 以上、見てきましたように、泊原発の位置する積丹半島の西方には、多くの、しかも長い活断層があり、それらは互いに近接しているために、連動する可能性もきわめて大きいと言えます。また、活断層が深さ3000m-2000mといった深い海底に存在することも重要です。大地震が起き、海底が持ち上がると、その上の海水がすべて持ち上がるために、巨大な津波になるからです。3.11でなぜあれだけ巨大な津波を起きたかといえば、もちろん地震が大きかったこともありますが、その地震が深さ1700mの海底の下で起きたことも大きな要因です。そして、海岸から130kmも離れた場所で起きた地震があれだけの津波を引き起こしたのです。津波のことを考えれば、100km圏内の活断層しか問題にしない北電の姿勢が、いかにずさんであるかがわかるでしょう。
 いっぽうで北電は、泊原発から30km圏内には1つも活断層がない、と主張しています。しかし地震性隆起を示す地形がこれだけあり、海底地形や音波探査データにも、海底の活断層を示唆する複数の証拠があることが変動地形学の立場から指摘されている以上、それを無視することは許されないと思います。先に述べましたように、泊原発の沖合わずか15kmに推定されているこの活断層は、東傾斜の逆断層であり、泊原発の直下で地震が起きる可能性すらあるのです。
小野有五図32
 訴状でも述べましたように、日本海側では明らかに地震の活動度が高まっており、次の大地震はいつ起きてもおかしくありません。3.11の巨大地震によってプレート自体が大きく動いてしまった現在、その危険はさらに高まったと言えるでしょう。
 1日も早く泊原発を廃炉にすることが、子どもたちのために、また北海道の未来のために、必要であると思います。
 裁判官におかれましては、このような現実を重視され、泊原発を廃炉にすべしとの判決を1日も早く出していただきたいと願っております。

 以上で、私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。