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泊原発廃炉訴訟について

● 意見陳述

小野有五 宍戸隆子

常田益代 森山軍治郎

清水晶子 村上順一

竹村泰子 林恭子

佐藤英行 斉藤武一

西尾正道

意見陳述

● 村上順一・意見陳述内容



命を守り育む農業を、一瞬に断ち切る原発事故

25年前に豊かな自然のもとで暮らしたいと考え、会社員生活を辞め、私たちは家族で余市町に移住してきました。私たちは平飼い養鶏を営み、その養鶏を利用して有機無農薬で野菜を作っています。安心・安全な食べものを求めている消費者に生産物を直接届けています。鶏たちは渓流の水を飲み、畑への灌水ももちろんその沢水を使い、野菜たちは育ちます。新鮮な空気を吸う。ミネラル豊かな沢水を飲む。豊かな大地の上で私たちは生きています。 昨年3月11日までは、この環境の中に住んでいることがしごく当たり前のことでした。この25年間で子どもたちは育ち、巣立っていきました。原発事故のあと、今までがなんと幸運だったのだろうと思っています。私の住む地域は泊原発から30キロ圏内です。福島第一原発の事故が教えてくれました。原発事故は今まで築いてきたものがゼロになるのではなく、マイナスになることを。ここで生物として生きることができないかもしれない。今、泊原発で事故が起きれば、ここで生きることはできません。私たちの農業は、多くの命を守り育てます。この北海道で穫れたものを餌にして健康な鶏を育て、その鶏が産む卵を食べ、そして野菜を食べることによって健康な食生活を送る。その思いは消費者と共有するものです。原発事故は鶏たちを遺棄し、いっさいの作物も作れないことを意味することがはっきりしました。食べ物からの内部被曝、なんと悲しいことでしょう。原発事故は命を守り育てる農業を一瞬にして断ち切るものです。

北海道の自然と未来、そして農業を守るのは私たちの義務

私たちは目に見えないものを含めて、この自然の中で生かされています。原発の安全神話は多くの方々が指摘しているように崩れました。原発がある限り、事故が起こることを想定し、目に見えない匂いもない放射線の不安の中で生きていくことを考えなければなりません。この不安は脅威でもあり、農業者がこの地で生きていこうという志を否定する以外何ものでもありません。泊原発のあるこの後志地方には、多くの農業者がいます。そして私たちを含め多くの新規就農者もいます。農業を生きる道と決め、夢を持って汗を流し、土と向かい合う姿を想像してみてください。人が生きていくために必要な農業には、未来があります。農業そのものが、未来なのです。泊原発で事故が起きれば、この後志地方だけでなく北海道の未来を築いていく北海道の農業を壊滅させてしまいます。澄んだ空気、豊かな大地、命を育む水を守っていくのは、今を生きる私たちの義務です。未来を担う子どもたちに対する義務です。

(原告・村上順一)