意見陳述

第11回口頭弁論 安藤 御史

原告:安藤 御史(みふみ)

私は、過去5回ベラルーシ共和国へ行って参りました。最初の訪問の1993年以降、人工放射能に汚染された地区に住む子どもたちの里親運動に関わり、2000年から2009年までの毎年、体内放射能の高い子どもたちの里親を私の自宅でしておりました。2011年からは、福島原発汚染地区の子どもの里親をしております。職業は医師です。

人間の体は省エネルギー

私たちはこの世に一人一人貴重な存在として生きています。
私たちの体を構成している60兆あまりの細胞は、常に再生されることが必要です。例えば、血液はほぼ3ヶ月毎に入れ替わります。短いものでは半日で再生されます。すべての再生の情報はDNAにあり、材料は外界から細胞内に取り込まれます。DNAの情報に従い、外界との絶え間ない物質のやり取りによって生命は維持されています。

物質のやり取りには、必ずエネルギーが必要です。私たちの体内の物質交換に必要なエネルギー単位は極めて少なく、省エネルギーになっています。

人工放射能は、人間のDNAを瞬時に破壊

一方、人間が作り出した人工放射能はとてつもないエネルギーを持っています。
人工放射能のエネルギーは、細胞が再生のために必要なエネルギーの数万倍から百万倍にもなります。従って、人工放射能はDNAを瞬時に破壊します。

生物は誕生以来、自然放射能に対しては慣れ親しんでいますから、その対処法を知っています。体内に取り込んでも、素早く排出し溜め込むことはしません。しかし、人工放射能に対しては対処することを知らず、濃縮さえします。
ですから、人工放射能は生命とは絶対に共存できません。

1986年のチェルノブイリ原発事故後、1990年から1999年まで人口放射能汚染地区のゴメリ医科大学の学長をしていた病理学者のバンダジェフスキー博士は、低線量放射能と食べ物について起きる、内部被曝について膨大な研究をして次のことを明らかにしました。

低線量被曝は危険なこと、セシウム137は生命維持に必要な代謝・組織に影響を与えること、胎児・子どもへは大人より4~10倍影響が強いこと、男性は女性より影響が大きいことなどです。

その結果としてベラルーシ共和国では、虚血性の心臓病、悪性腫瘍、ウイルス性肝炎、結核が増加、新生児発達異常、先天性障害の増加が見られました。国際原子力委員会が報告している子どもの甲状腺癌だけではないのです。

事故後10年目ころから人口が減少しはじめ、特に汚染地区ではベラルーシでも、ウクライナでも人口減少が現在も継続しています。

私たちが調査している汚染地区の二つの学校の子どもたちの内部被曝の異常値の比率は、事故後23年目の2009年でも、95%と96%の高率でした。

絶滅期にある地球  その原因は人間では・・・

地球は今、生命の6回目の大量絶滅期にあります。多くの動植物が絶滅しつつあります。第5回目は6500年前の小惑星の衝突のように、過去の絶滅期の原因はすべて天災によるものでしたが、今回は人間が原因ではないかと考えられています。

人工放射能の被曝は、生物の絶滅を加速させるでしょう。
生命とは絶対に共存できない人工放射能は人間が始めたものですから、人間が止めることが出来ます。
原子力発電の利用を止め、廃炉にすることが私たちの世代が選択すべき道と信じます。