子どもへの影響はおとなの数倍
私には五人の子どもがいます。原発事故が起こったときは、一番下の子を妊娠中でした。
原発事故によって、たくさんの放射性物質が放出されました。私は放射性物質がいろいろな形をとって、広がることを想像します。例えば、雲に含まれ、雨になって農作物に降り、その農作物が食卓に上ることを。一方では、森に放射性物質が降りそそぎ、森の落ち葉で堆肥が作られ、放射性物質を取り込んだ農作物が食卓に上ります。
子どもは放射性物質の影響が大人の何倍にもなるというので、私はその危険をできるだけ低くしたいと考えています。原発事故以来、東北、関東、中部地方で生産されたものは買わないようにしています。こうして食べものに気を使って、子どもたちが放射性物質を取り込む心配を、減らす努力をしています。これは3・11以来、日常のことになりました。しかしもし、泊原発で事故が起こったら、今の努力くらいでは避けようのない放射性物質のもとで、子どもを育てていくことになります。そんなことはできないと思います。
原発のない社会を子どもたちにプレゼント
この裁判の原告に家族全員がなりました。一歳や四歳の子に意思を確認することはできないので、原告にしていいのかと悩みました。でも、今は原発のない社会を作り、子どもたちにプレゼントするのだと考えています。
この訴訟の原告募集を聞いたときに、これなら私にもできると思いました。3・11以来、多くの人が被災地へボランティアとして向かいました。私も、被災された方の役に立ちたいと切実に思っていましたが、私には小さい子どもがいたので、被災地には行きませんでした。でも、特に被災地のおかあさんたちに気持ちを重ね合わせていました。原発のない社会を作っていこうと願い行動することは、小さい子どもの手を引いて被災地にいらっしゃる、心細いおかあさんに寄り添うことになるのだと信じています。
(原告・林 恭子)