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北海道がんセンター名誉院長であり、泊原発の廃炉をめざす会会員の
西尾正道さんの新刊をご紹介します。
「患者よ、がんと賢く闘え! 放射線の光と闇」
西尾正道 著
旬報社刊 11月30日発売
●著者による紹介
第二次世界大戦をはさむ70~80年前から、科学・医学・技術は劇的に進歩した。この進化は長い人類史の中でも特筆すべきものであろう。
1938 年に原子核分裂が発見され、1953年にはDNAの2重螺旋構造が発見されたことにより、大量殺戮兵器の開発と遺伝子レベルでの医学研究や遺伝子組換え技術が世界を造り変えようとしている。こうした科学技術は光と影の世界があり、使い方によっては、人類滅亡へと繋がりかねない負の側面を持っている。これらの科学・技術は人類のために使われるという崇高な理念ではなく、現実は金儲けの手段として使われているため、不都合な負の側面は隠蔽される。その代表的なものが放射線の健康被害の問題であり、また農薬や遺伝子組換え技術の人体への危険性である。企業の広告料で経営を維持しているテレビや新聞などの大手メディアは企業に不都合な真実の情報は報じない。
約40年間放射線治療医としてがん治療の領域で放射線の光の世界を求めてきたが、2011年3月の福島原発事故後は放射線の健康被害について考える機会となった。20世紀後半からは人類は放射線との闘いの時代となったが、核兵器開発や原発を稼働するため放射能の健康被害という影の世界の真実は隠蔽され、科学的とは言えない理屈で国民をだまし続けている。
急増している小児の発達障害の最大の原因は、現在最も普及しているネオニコチノイド系農薬が絡んでいることが解明され、さらに最近は発がんや認知症やうつ病との関係も報告されるようになっている。そして福島原発事故後には国家の愚策による総被曝国家プロジェクトが進行しており、国民の健康被害が危惧される。
放射線や農薬などの多量複合汚染による環境悪化のなかで、がん罹患者数は年間100万人を越える事態となり、原因が解明されていない指定難病も330疾患に増加している。こうした現代人の健康問題を抱え込みつつ、私たちは今、高騰する医療費問題や、認知症を伴う高齢者の問題にも向き合わなければならない。
本著の第1部は私が支援している「市民のためのがん治療の会」の活動や日本のがん医療の問題、第2部では政府や行政が原発事故対応の根拠としている国際放射線防護委員会(ICRP)のインチキな放射線防護学について論じた。疑似科学的物語で放射線の健康被害を過小評価して核兵器製造や原子力政策を行っている問題を、放射線治療を生業としてきた臨床医の実感から、そのインチキさをラディカルに考えてみた。
科学性をもった正しい知識で放射線を利用することが重要なのであり、がんが多発している日本の現状を病因論も含めて、自分の命をどう守るかを考える一助となればと思います。